書評 – 勝ち続ける意志力

プロゲーマーの梅原大吾さんによる『勝ち続ける意志力』を読んだ。

「ニッチな層に向けたマニアックな本だろう」と予想しつつ手に取ったが、よい意味で想像が裏切られた。プロゲーマーとして「勝ち続ける」ために彼が考え抜いたことは、僕を含む多くの「一般人」にも糧になる内容であった。

安易でない道の選択

セオリーを追い続けることでは超えられない壁がある。本書には「10 の実力を超えて、11、12、13 という実力を身につけた人は強い。そのレベルの強さは説明がつかない。だから、それは簡単に真似できるものではない」とある。セオリーを追わず、ひとつずつの可能性を自ら検証して、その領域にたどりつけるのだろう。たとえば僕が、ゲームの攻略サイトなどを眺めながら「強い」とされるコンビネーションを覚えればそれなりに勝てるようにはなるだろう。でも、同じコンビネーションを「なぜそれが強いのか」を肌で理解した上で繰り出してくる相手には勝てないだろう。上っ面をなぞるようではいけない。

とはいえ、「10 を超えた実力」は一朝一夕に身につくものではない。彼は「一日に少しでも (よい方向に) 変化できればよい。その積み重ねが実力になる」と書いている。そして、「変化する」ために方法として「苦手な人とつきあってみる」ことを挙げている。自分にはない発想だったが、たしかに自分とは合わない人間と時間をともにすることは、自分を変化させるために効率のよい手段だと思う。楽な道ではないが…。

目標と目的

本書の後半では「努力は持続可能でなければならない」という主張が強くなる。一夜漬けのような努力ではいけない、ということだ。彼自身、ある大会に向けて練習をし過ぎて、体調を悪くしたことがあるらしい。その結果、大会では散々な成績に終わったそうだ。今では休憩も練習の一部だと捉えているらしい。

いくつか、努力を継続するための具体的な tips も書かれている。

たとえば、「勝って天狗にならず、負けてなお卑屈にならない」くらいが勝負にかける意気込みとしてはちょうどいい、と書いている。また、別な言葉では「大会に勝って100の喜びを得ようとは思わない。それよりも、日々の練習において60の喜びを得たいと思う」とも言っている。つまり、日々の練習などで自身の成長を感じ続けることの方が、大一番の勝負に全精力を傾けるよりも健全だという主張だ。彼がいうには、そういう心持ちで臨んだ大会の方が、むしろ勝率は高いとのことだ。

分かるような気がする。

勝負事は常に運の要素が絡んでくる。いくら入念に準備をしても、ダメなときはダメなものだ。ダメなときに消沈しても意味がない。運に振り回されず、たんたんと日々の練習に充実感を求める方が、努力としては持続可能なものになるだろうし、ひいては勝率にも貢献するだろう。この考え方は積極的に取り入れていきたい。

まとめ

人気があるゲームのプレイヤは「ガチ勢」と「エンジョイ勢」に分けられることが多い。前者は競技としてのゲームを楽しむ人たちで、後者は娯楽としてのゲームを楽しむ人たちだ。僕がゲームをするときは、たいていの場合は「エンジョイ勢」としてプレイする。梅原さんとは対局にいる人間だ。

「ガチ勢」の中でも「ガチのガチ勢」である梅原さんの言葉は重い。最近はゲームを「e-スポーツ」と表現することもあるが、まさにアスリートのような態度でゲームに臨んでいる。

この本は、アスリートとしての梅原さんの金言が散りばめられていて、読んでいてかなり心を揺さぶられた。手に取ろうか迷っている人がいたら、ぜひ背中を押してあげたい。そのくらい、気に入った本のひとつだ。

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