書評 – Soft Skills

前の記事でも少し触れた『Soft Skills』という本を紹介しよう。

この本はソフトウェア開発者向けの本としてはかなり異色で、ソフトウェア開発そのものについてのトピックはほとんど存在しない。代わりに、ソフトウェア開発者が人生をよりよく過ごすためにする べき ことについて書かれている。

例えば、次のような章がある。

  • 第11章: 自由を得る: 仕事の辞め方
  • 第17章: ダメな履歴書をよくする方法
  • 第21章: 大成功するブログの作り方
  • 第27章: 学び方を学ぶ: 独学の方法
  • 第34章: 学位は必要か、なしで済ませられるか
  • 第38章: ポモドーロテクニック
  • 第50章: 給与交渉の方法
  • 第52章: 不動産投資の基礎
  • 第60章: 筋肉のつけ方: オタクでも膨らむ上腕二頭筋
  • 第64章: フィットネスのためのオタク向けテクニカル製品
  • 第68章: 恋愛と人間関係: コンピューターはあなたの手を握れない

実に多岐にわたる内容だ。

読書メモ

読みながら、いくつか付箋を貼った。このブログにもメモを残しつつ転記しよう。

「第4章 社交術: 考えている以上のものが必要だ」

  • 決して批判しない
  • なんとしても議論を避ける

他人の行動を改めたいのであれば、間違った行動を批判するのではなく、その人が正しく行動したときに褒めるべきだ。なぜなら『人を動かす)』にもある通り「どんな人間も、自分が尊重されていると感じたい」からだ。自分を尊重してくれる人間に耳を傾けないでいることは難しい。まずは相手を尊重することからはじめよう。

また、正しい論理展開で議論を進めれば、かならず合意にたどりつけるという幻想も捨てるべきだ。人間は感情を持つ生き物だ。例えば、自分の今までの努力を誰かに理路整然と否定されたとしよう。それを「ありがたい」と思える人は少ない。僕自身も、たぶん「ありがたい」より先に「むかつく」という気持ちを先に持ちそうだ。

避けても大事にいたらない議論であれば、避ける方が賢明だ。

「第24章 講演、プレゼンテーション、講師: しゃべるギーク」

この章には背中を押された気分だ。少し引用する。

(人前で話すのが怖い?) 全然問題ない。多くの人がそうだ。…。私たち人間は非常に適応性が高いということを覚えておこう。…。人前で話し続けていれば、時間とともに適応して恐怖は消える。

今までのキャリアでは、社内でプレゼンテーションをすることはあれど、社外で話すことは多くはなかった。

せっかくカナダから日本に戻り、日本語でプレゼンテーションできる機会が増えたのだから、積極的に話していこうと思う。少し前にも Kubernetes Meetup で LT をさせてもらったけど、この手のチャンスには手を上げて行こうと思う。経験を重ねて恐怖をつぶしていきたい。

「第26章 バカにされるのを恐れるな」

タイトルが全てかもしれない。

最初は誰もが素人だ。素人は玄人から見てもらうことで成長する。あなたが素人であるならば、素人として見られることは得なことじゃないか。

バカにされることを恐れてチャンスを逃すなんて、それこそバカみたいだ。

「第50章 給与交渉の方法」

僕がカナダで働いていた時代に知りたかった話だ。どちらかというと北米文化を前提としている。

『Soft Skills』の主張は次の通りだ。

まず、面接官に「希望給与は?」と聞かれても答えない方がよい。募集ポジションに割り当てられている予算より下を言ってしまう可能性があるからだ。先に会社の予算を話してもらうようにするべきだ。

また、現在の給与を聞かれても返答するべきではない。理由は…自明だろう。現在の給与を聞かれたときのテンプレートも紹介されている。

「申し訳ありませんが、今いただいている額は申し上げたくありません。御社がこのポストに考えられている額よりも高い場合、私としてはこのポストなら給与が下がってもいいと思っていますので、選考対象から外されてしまうのは不本意なことです。そして、御社が考えられている額よりも低い場合、自分を安く売りたくはありません」

この回答は十分に受け入れられると思う。自身の面接官としての経験を踏まえても、こう言われて気分を害することはないだろう。

ここから先は日本では難しいかもしれないが、給与を提示された後での話だ。カナダでは (そしてアメリカでは)、提示額をそのまま受け入れることは稀らしい。「らしい」というのは僕自身がカナダで仕事を手に入れたときには知らなかったからだ。プロトコルとしては、「1. 企業から給与を提示される」「2. 自分の希望給与はさらに高いという」「3. 企業から調整された条件を再提示される」というのが一般的のようだ。場合によっては「2. ~ 3.」を繰り返すこともあるようだ。

一般に、日本よりも北米の方が採用にかけるコストが高い。誰もが知っている技術系企業の北米ブランチに転職した友人は、採用試験のために数日間ずーっと缶詰にされたと言っていた。そのくらい厳しくチェックして採用のオファーを出しているのだから、多少きびしく条件を詰められたくらいで採用通知を撤回するわけには行かないのだろう。

良し悪しはあるだろうけど、僕は北米の採用カルチャーの方に好感を持つ。

「第70章 失敗に正面からぶつかれ」

これもタイトルが全てかもしれない。

失敗を喜び、期待し、受け入れ、正面からぶつかることを学ぼう。…。単に失敗に対する恐怖を取り除いただけでは不十分であり、さらに失敗を求めるようにすべきだ。成長したければ、確実に失敗することが保証されているような状況に身を置く必要がある。

よいアドバイスだと思う。

僕にとっては4年間のカナダでの生活が「失敗が保証された状況」だったように思う。見知らぬ土地で不慣れな言語で仕事をするのだから、当然だろう。カルチャーも違う。ただ、楽観的な気持ちで「死にはしないだろう」というつもりで海を渡った。結果として、失敗もやはり多かったが、得られた経験は大きい。今の職場で働けているのも、ここでの経験があるからこそだ。

総括

『Soft Skills』は「ごった煮」である。僕が好きだと思う章と、他の人が気に入る章は違うだろう。そして、僕自身も全ての章の内容に同意しているわけではない。それでも、何かソフトウェア技術者としての生活に不満があり、改善したいと思っているのであれば、何かのヒントは見つかる本だと思う。

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